出産記録(後編)

うわ~、前編書いてから2か月経っちゃった!
子育てって忙し過ぎて、時々タイムスリップしてしまいます。
とりあえず続きを。

結果として、1日だけとはいえ早産になってしまった王子ですが、そもそも妊娠中にお腹に向かって「なるべく早く、小さめに産まれてきてね♪」と語りかけていたのは私です。
だって、妊娠後期はとにかくお腹が重くて苦しくて、腰は痛いし、息は苦しいし、本当に大変だったんですもの。
出産経験者の友人に聞くと、妊娠中の語りかけは結構効果があるらしく、例えば「ママ、痛いのは嫌だから、なるべく楽に、ポ~ンって産まれてきてね」って言い続けているとその通りになったりするらしい。
胎児とはいえ、ママやパパの気持ちに答えようと、頑張ってくれるのかな?
でもその説で行くと、我が家の王子は、素直で、可愛くて、男前で、優しくて、賢くて、親孝行でetc…とにかく、超完璧な人間になっちゃいますね。

さて、前回の出産記録の続きです。
ようやく分娩室に行ける事になったのですが、この頃にはすっかり体力がなくなっちゃって、目の前にお星様がキラキラ舞っているような状態の私。
こんなんで、無事に出産ができるのか?と不安になっていましたが、出産はノンストップ!
今更陣痛をなかった事にする訳にも行かないのです。
車椅子で分娩台まで連れて行ってもらい、ヨッコラショと分娩台によじ上る。
分娩室は予想以上に手術室って感じで(そりゃそうか)、一瞬緊張してしまいました。が、痛みですぐにそんな気持ちは吹き飛びました。
立ち会い出産をする旦那も、術衣を着てスタンバイ。(医療行為の度に旦那は部屋を追い出されていましたが)
再びモニターをお腹に巻き付けて、胎児の様子も確認しながらのお産です。
途中でどうなるか分からないお産だという事で、吸引具やら帝王切開の器具やら、必要となりそうな道具を先生がすべて足下に並べていました。
入院してからしていた点滴に、陣痛促進剤もプラスして、陣痛の間隔を狭めて行きます。
この時、すでに子宮口全開大でいながら7分間隔の陣痛だった訳ですが、今考えるとまだこの頃は余裕がありました。
痛みはメチャクチャ強いのですが、痛くない時間も数分間あるので、その間にゆっくり息を整えることができたのです。
それが薬の効果でだんだんひっきりなしの痛みになってきて・・・この辺から、痛い事ばかりに意識が集中してしまっているので、周囲の様子が断片的にしか思い出せないのですが。

しばらくして、お医者さんが「破水させますね」と。
痛みですっかり忘れてたけど、そういえばお産には破水って言うものがあったわね~。
陣痛の間隔も狭まってきて、子宮口も全開大なのに、なぜか全然破水しなかったので、人工破水をする事になりました。
お医者さんが何かしたな~と思ったら、プツンっていう感覚(多分卵膜を破った)と共に、どぅわ~っと体内からお湯が!!
羊水ってこんなにたくさんあるんだ~、ってびっくり。
自分が温泉の源泉になったような気分でした。

ところで、な~んかお医者さんも助産師さんも、分娩室を出たり入ったりしているな~。結構放置されてる時間が長いな~なんて思っていたら、実はこの時、別のお部屋(陣痛室というものがある。私はモニターに繋がれてたので入れなかったけど)でウンウン良いながら陣痛に耐えている妊婦さんが私の他に3人もいたのです。
なのにこの時は、日曜の深夜。
当直の産科医は一人しかいない!
助産師さんも少なかったのか、入院時に担当していた若い方は他のお産に付きっきりになり、途中で別の助産師さんに代わっていました。おかげで、後半は超ベテランの方に付いて頂けたのです。ラッキー。

出産には呼吸法があって「○分間隔の時はこういう呼吸が良い」っていうのがあるのですが、私の場合間隔は長いけど全開大っていうのがずっと続いていて、「どういう呼吸をすれば良いんだっけ?とりあえず深呼吸で痛みを逃しとこ」っていう、かなりアバウトな状態でした。
いやそれで間違いではないんですけどね。
助産師さんに質問すれば良いのですが、なぜかいっぱいいっぱいで、ず~っと聞き忘れ続けていたのでした。
「破水するとお産が進みますよ」って助産師さんが言った通り、この頃痛みがピークになっていて、腰骨に直接火が付いたように熱くなってそのまま砕けるんじゃないかという感覚になってました。
個人的には、実際に産むときよりもこの時が一番痛かった!!
多分、胎児が降りてきて、骨盤を押し広げていたんじゃないかな~。
思わず「痛い痛~い~」と言いながら、分娩台を飛び降りたくなってしまいましたよ!
助産師さんが隣で「フ~ウン。の呼吸ですよ」と教えてくれたので、おかげでほんのちょっとだけ楽に。
そういえば、有名な「ヒッヒッフ~」の呼吸は最後まで使わずに終わってしまいました。あれ、どこで使うんだったっけ。
この辺で会陰切開もしていますが、陣痛の痛みのせいでどのタイミングで切ったのか覚えてません。
当初なるべく切らないお産で・・・と思ってはいたものの、いざとなると赤ちゃんが安全に出てくるなら、とまったく気にならなくなりました。母性ってすごいな~。

自分の痛みに夢中でしばらく気づかなかったのですが、いつの間にかカーテンの向こうのもう一つの分娩台に妊婦さんが上がっていたらしく、そちらからもウンウンいう声が聞こえてきました。
あらあら、あちらも大変ね~と思っていたら、意外とすぐに産まれたらしく、オンギャーと産声が!
もう産まれたの!?う~ら~や~ま~し~い~。

私も出したい~!と思っていたら、そちらの出産を終えた先生がやってきて、私の様子をチェックし、「いきみたかったらいきんで良いですよ」と。
いきんで良いの!?よし、踏ん張ったるで~~っと、気合いを込めて思いっきりいきんでみたら、先生が何やら色々チェックした後、「私が押して手伝えばこのまま産めそうだから、産んじゃいましょう。」と、私の足下にいる助産師さんに話しかけてました。(実際に取り上げるのは助産師さんで、先生は医療行為に専念っていうスタンスのようでした)
「おお!ついに産めるのね!」と思ったのと同時に「ん?押す?」という疑問が頭の中をよぎったのですが、すぐに次の陣痛が来てしまったので、再び思いっきりいきむと!
なんとお医者さんが、私のお腹を、思いきり体重をかけながらグイグイと押しまくる押しまくる!
まるでパンやうどんをこねるがごとく、ドカドカと押されました。あ~びっくりした。
痛みの波が引いた途端、なにすんねん!と思わず先生の方を向くと、先生も「あら?出て来ない、困ったわ~」という表情でこちらを振り向きました。
そういえば、こんな医療行為もあるって漫画で見た事あったな。
出ないならどうなるの~?と思いつつ、その後2~3回の陣痛はドカドカ押されつつ、出て来ない状態が続きました。ヒ~。
何度目かの陣痛時に助産師さんから「お尻が逃げてますよ!私の方に突き出して!」と言われたのでいきみながらその通りにすると、なんだかあっさりと抵抗がなくなって、頭が出ました!
なんだ、分娩にはコツがあるんですね~。
その後は助産師さんに言われるままに、ハッハッと浅い呼吸を繰り返していたら、気づくと足下に赤ちゃんがいました!
思わず「出た~」と言ってしまいました。もう少し感動的な台詞を言いたかったんですけどね。
初めて見る我が子は、小さくて、苦しかったせいか全身紫色でした。
それに、やっぱりへその緒がぐる~っと体を一周巻いてました。後から言われた事ですが、そのせいでお産もなかなか進まず、破水もせず、胎児も苦しかったのではないかと。
で、次の瞬間、「キ~~~ッ」って、甲高い、猿の出す警戒音みたいな声がしましたが、どうもあれが王子の第一声だったみたいです。
あら、大丈夫かしら?と思っていたら、先生が口の中を吸引してあげたらしく、次に聞こえたのは赤ちゃんらしい「おんにゃ~」っていう産声でした。ほ~っ。
呼吸が始まると、紫色だった体もみるみるピンク色に変わって行き、あ~良かった。

すぐにバスタオルで包んだ赤ちゃんを私の胸元に抱かせてもらい、カンガルーケア。
小さくてぐしょ濡れで、グニャグニャであったかくて、世の中にこんなに愛おしい宝物は他にないってくらい幸せな気持ちになりました。
と同時に、陣痛の痛みとか全部忘れて、あまりの幸福感に「もう一回産みたい」ってつい思ってしまいました(笑)
沖縄の海で初めてスキューバダイビングをした時以来の、世界が変わった!っていう感動。
(ナショジオでやっていたのですが、陣痛の痛みは忘れるように、脳内から麻薬的な何かのホルモンが分泌されてるらしいです。よくできてますよね)
立ち会った旦那も、感動でうるっと来たらしい。
私はテンションが上がり過ぎてるのと、それどころではない状態なので泣きはしなかったけど。

本当のカンガルーケアは1時間以上ずっと抱いているものらしいのですが、この産院ではサービスの記念撮影を助産師さんがしてくれた後、いったん母子が離れます。
赤ちゃんは色々計測しに行き、その間に母親はお産の続きを。
ええ、お産はまだ終わりじゃないんです。
次は胎盤が出る後産。
といっても、初産の後産はほとんど痛みはないらしく、私もちょっと癒着があって時間はかかったけれど、まったく痛みもなく終わってしまいました。
せっかくの体験だから、自分の胎盤を見せてもらうつもりだったのですが、テンションが上がり過ぎて興奮状態だったので、すっかり忘れてしまった。残念!
その後お医者さんが会陰切開の縫合をしたり、出血具合を確認したり、助産師さんからお茶をもらったりしていると、計測を終えた王子が戻ってきました。
(最近のお産は産湯を使わない産院が多く、王子も簡単に拭いただけで戻ってきました。胎脂が赤ちゃんに良いということが分かってきたからなんですって。王子は少し小さく産まれてきたので、3~4日はお風呂に入らず、胎脂と私の血!で濡れたままでした)
再び抱っこしていると、助産師さんから「本当はこのまま2時間は分娩台で母体の様子を見なきゃいけないんだけど、次のお産が詰まってるから別室に移動しますね」と言われました。
その後別室での経過も問題なかったので、これでお産は終了。
結局、帝王切開も吸引もせず、ちょっと医学の力は借りたけれども、自然分娩できてホッとしました。

世間で問題にもなっていますが、産科のお医者さんは本当に大変。
この時みたいに、何件もの出産を一人で同時進行で掛け持ちしなくてはならないことがあると、ほんとうにハードだなって思います。
何事もなく無事に産まれれば良いけど、全部のお産がそうとは限らないだろうし・・・。
と同時に、命の産まれる瞬間のお手伝いができて、これ程感動的で尊い仕事もそうはないでしょう。
なんとか産科医を増やして、すべてのお産がなるべく少ないリスクで行えるような態勢を整えて欲しいものです。

出産を終えてみて、改めて、大仕事だったけど産んで良かったっていう思いでいっぱいです。
もちろん、育児は更に大変なんだけど、なんだか新たな世界に踏み出したようで、ワクワクしています。
産む前は、実は子供ってそれ程好きって訳じゃなかったんですけど、今はすべての子供達が愛しくて仕方ありません。
我が子はもっと可愛い(笑)
えぇ、思いっきり母性本能に振り回されてますけど、それも良いんじゃないですかね~。